大田区の特区民泊の申請の流れ | 法律・リフォーム工事の注意点まとめ
最終更新:2024年11月07日
執筆者
たてのリフォーム 代表
舘野 久璃洲
新卒から不動産業界で活躍し、現在は賃貸とリフォームを軸にたてのリフォームの代表として活動。年間220件の施工実績の経験をもとにお客様に最適なプランを提案。『品質至上主義』をモットーに大田区を中心としてリフォーム事業に邁進中。
監修
たてのリフォーム 工事統括者
藤澤 典隆
全リフォームの職人手配から当日の段取りまで担当。リフォーム業界歴30年超えの経験をもとに、リスク回避と高品質な施工に定評があります。
目次
民泊の種類について
民泊には『簡易宿所』『特区民泊』『新法民泊』の3種類があり、民泊の種類によって適用される法律や民泊の運用条件が異なります。
東京都大田区は、日本全国で数少ない『国家戦略特別区域』に指定されているため、『特区民泊』という種類の民泊制度を利用することができます。
簡易民泊 | 特区民泊 | 新法民泊 | |
---|---|---|---|
適用法 | 旅館業法 建築基準法 |
国家戦略特別区域法第13条 建築基準法(住宅要件) |
住宅宿泊事業法 建築基準法(住宅要件) |
許認可 | 許可申請 | 認定申請 | 届出(オンライン) |
営業日数制限 | なし | なし | 年間180日以内 |
最低利用日数 | なし | 2泊3日以上 | なし |
建物用途 | ホテル・旅館 | 住宅、長屋、共同住宅 | 住宅、長屋、共同住宅、寄宿舎 |
消防法令 | 宿泊所と同等の基準 | ||
立地 | 「旅館・ホテル」の建築可能な用途地域 | ||
工事費用 | 高額 | 普通 | 低予算 |
申請難易度 | 難しい | 普通 | 簡単 |
申請期間 | 3〜6ヶ月 | 2〜3ヶ月 | 1ヶ月 |
全国件数 | 約60,000件 | 約6,000件 | 約30,000件 |
制度開始 | 1950年 | 2016年 | 2018年 |
結論からお伝えすると、大田区で民泊を始める場合は特区民泊をおすすめします。
それぞれ詳しく解説します。
簡易民泊(旅館業法)
「営業日数」および「最低利用日数」に制限がないため、民泊運営に向いている制度です。ただし、適用される法律が『旅館業法』のため、条件に合致する物件を探し出すのが難しのも現実です。
また、フロントの設置や、宿泊人数によってはトイレの最低個数が決められていたりと、初期費用のリフォーム工事も高額になる傾向があります。
本格的に民泊事業を行う方で、物件探しの難易度、リフォーム工事が高額になることも許容できる方におすすめの民泊制度です。
特区民泊(国家戦略特別区域法)
正式名称は『国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業』と呼ばれ、外国人を対象にした民泊サービスであれば旅館業法の適用が免れるという制度です。
特区民泊の主な特徴は3点あります。
- 建築基準法の用途変更不要(住宅のまま)
- 営業日数の制限なし
- フロント(受付)や管理人の常駐義務なし
また、特区民泊制度は試験的運用の意味合いも兼ねているため、活用できる地域は下記のみとなります。
- 東京都大田区
- 新潟県新潟市
- 大阪府
- 大阪府大阪市
- 大阪府八尾市
- 大阪府寝屋川市
- 福岡県北九州市
- 千葉県千葉市
注意点として、最低宿泊日数が3日以上(2泊3日)という条件があります。これは外国人をターゲットとして始まった制度のために設けられた条件です。
また、特区民泊は大田区全域が対象ではなく、実施地域が限られています。物件取得前に、特区民泊実施地域かどうかを保健所で必ず確認しましょう。
▼ 関連資料
大田区における国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業(旅館業法の特例)の実施地域(PDF:498KB)
新法民泊(住宅宿泊事業法)
2018年に始まった民泊制度が新法民泊で、外国人観光客のニーズに応えるために、滞在していない期間に貸し出すための宿泊施設という位置付けのため、年間の営業日数が180日に限定されています。
申請が手軽なため、2018年から始まった制度にも関わらず既に3万軒を超える民泊が認定されています。
ただし、やはり年間の営業日数が180日と限定されているため、あくまで空き家を有効活用したい程度の方におすすめの制度です。
大田区の特区民泊の申請に必要書類
特区民泊を行うために必要な書類は、『保健所の許認可』です。
そして、保健所の許認可を取得するために準備する必要書類が2つあります。
- 消防法令適合通知書(所轄の消防署)
- 住民説明会資料(生活衛生課)
必要書類①消防法令適合通知書
民泊をする上で最もハードルの高い手続きが『消防法令適合通知書』です。特区民泊の対象となる物件が、消防法令に合致しているかを証明するための書類です。
消防法に合致するためには、大きくは『消防設備』を充実させ、『防火区画』を設置する必要があります。必要な工事は、物件の作りによって大きく異なるため、図面を持って所轄の消防署に確認しましょう。
消防法令適合通知書を取得するための大まかな流れは以下の通りで、やり取りは所轄の消防署になります。
- 事前相談
- 書面審査
- 消防法令に合致するリフォーム工事
- 検査・調査
- 消防法令適合通知書発行
申請書類や、消防法令に合致するリフォームを理解することは非常に難しいため、消防法令を熟知している消防設備士に丸投げする方法もあります。
消防法令に合致するリフォームの事前調査、リフォーム工事、通知書発行まで、一括で専門業者に依頼すると40万円〜60万円ほどかかります。
必要書類②住民説明会資料
民泊を行う場合、特区民泊に限らず近隣住民に対して説明会を開催する義務があります。
具体的には、特区民泊を行う物件の外壁から20m以内に位置する居住する方へ、説明会を開催する旨が記載されたチラシをポスティングし、説明会を開催します。
なお、説明会のチラシをポスティングする前に、必ず生活環境課に説明文書の事前確認が必要となりますのでご注意ください。
また、説明会を開催したということを保健所に伝えるために、以下の準備をする必要があります。
- 説明会開催のチラシを、物件の玄関に貼る(写真が必要)
- ポスティングのチラシ枚数と配布エリアがわかる書類(Google Mapに記載するなど)
大田区の特区民泊を行う上で必要な工事
次に特区民泊を行う際に必要なリフォーム工事の費用面についても解説します。
大田区の特区民泊では、大きく3つのリフォーム工事が必要になります。
- 選ばれるためのリフォーム工事
- 建築基準法に合致する工事
- 消防法に合致する工事
選ばれるためのリフォーム工事
見た目や生活の利便性向上のために、内装のリフォーム工事は必須です。
民泊需要があるとはいえ、ホテルを含め競合は多数ある中での競争となるため、競合の宿泊施設と比較検討された際に選ばれるだけの十分な内装リフォーム工事は、集客という観点から重要です。
特に、特区民泊は3日以上の滞在(2泊3日以上)が条件となるため、利用する外国人は洗濯物について課題があるため、洗濯機の有無について気にする方が多いです。
また、合わせてタオルの枚数についてもこだわる方が多いため、宿泊数×宿泊人数×2倍程度の準備をしておくことをおすすめします。
逆に、外国人観光客は外食することが多いため、キッチンのリフォームは最低限で良い場合が多いです。
建築基準法に適合するための工事
建築基準法を遵守する上で、避けて通れないのが『竪穴区画』です。
竪穴区画とは、ビルやマンションの中で火事が広がらないように工夫された部分のことで、防火区画と呼ばれたりします。
防火区画では、部屋と階段の通路に防火戸や防火壁を設置する必要があり、特に戸建ての場合は、1階から2階、2階から3階の階段までの道を確保するために、通路と部屋を仕切る工事が必要になることが多いです。
消防法に適合するための工事
民泊を行う場合、建物は全て特定防火対象物として扱われ、一般住宅とは異なり高性能な消防設備が求められます。
大田区では、主に3点が求められます。
- 誘導灯
- 消化器
- 自動火災報知設備
特に、自動火災報知器設備は建物によっては大規模な工事が必要になることもあり、工事費用で100万円から200万円ほどかかることもあります。
建物によっては『特定小規模施設用自動火災報知設備』の設置で10万円前後で済む場合がありますので、所轄の消防署に確認しましょう。
大田区の特区民泊の事業開始までの全体の流れ
それでは具体的な特区民泊の申請手順について解説します。
- STEP1. 事前相談:生活衛生課
- STEP2. 事前相談:建築審査課
- STEP3. 事前相談:所轄の消防署
- STEP4. 近隣住民への説明文章作成および説明会開始
- STEP5. 消防署への届出提出および認定申請
- STEP6. 要件に合致するリフォーム工事
- STEP7. 消防署の施設検査および保健所の立入検査
- STEP8. 認定書の受領
- STEP9. 事業開始
STEP1. 事前相談:生活衛生課
まず初めに、生活衛生課で事前相談を行います。ここでは、特区民泊の概要、認定要件などについての説明が行われます。
認定要件から手続きの流れまで、民泊手続きの全体像を教えてもらえます。指導後に「相談受付簿」を受けることができます。
▼ 関連資料
大田区における国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業(旅館業法の特例)の実施地域(PDF:498KB)
主な認定要件は6つです。
- 一居室の床面積が25㎡以上で施錠可能であること (一定要件を満たせば20㎡以上)
- 台所、浴室、便所・洗面設備があること
- 寝具、テーブル、椅子、収納家具、調理・清掃に必要な器具などがあること
- 外国語を用いた案内があること
- 滞在期間が2泊3日以上であること_
- 建築基準法上「ホテル・旅館」が建築可能な用途地域であること
所要時間 | 約60分 |
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持参書類 |
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連絡先 | ▼ 大田区生活衛生課環境衛生担当 03-5764-0694 |
▼ 関連資料
特定認定審査基準・添付書類等一覧(PDF:340KB)
STEP2. 事前相談:建築審査課
生活衛生課の事前相談終了後、火災時における避難安全性を確保するための装置として、一定の要件を満たす工事が必要となります。
建築審査課への相談は、この事前相談のみとなり、確認は保健所が行うため、リフォームで取り返しのミスがつかないように丁寧に確認しましょう。
所要時間 | 約60分 |
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持参書類 |
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連絡先 | ▼ 大田区建築審査課建築審査担当 03-5744-1388 |
▼ 関連資料
特定認定審査基準・添付書類等一覧(PDF:340KB)
なお、用途変更が不要、最低滞在期間を7日以上など、条件によっては建築審査課への事前相談は不要になります。
STEP3. 事前相談:所轄の消防署
民泊を行う上で最も重要な消防法についての説明を受けることができます。お問い合わせ先は、特区民泊を行う地域によって所轄の消防署が異なります。
所要時間 | 約30分 |
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持参書類 |
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必須情報 |
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連絡先 | ▼ 大森消防署 03-3766-0119 ▼ 田園調布消防署 03-3727-0119 ▼ 蒲田消防署 03-3735-0119 ▼ 矢口消防署 03-3758-0119 |
STEP4. 近隣住民への説明文章作成および説明会開始
民泊を行う際は、近隣住民へ説明する義務があります。
外国人を宿泊させるということは、文化やマナーの違いから騒音問題やゴミの出し方で近隣住民に迷惑をかける可能性があります。そのため、特区民泊では近隣の住民に対して説明会を開催する義務が設けられているのです。
ただ、説明会を開催する前に、必ず説明文章を生活衛生課に確認する必要があります。
説明会の開催手順は定められており、また生活衛生課で事前審査を行う必要があります。
所要時間 | 約30分 |
---|---|
持参書類 | 近隣住民の説明用書類
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連絡先 | ▼ 大田区生活衛生課環境衛生担当 03-5764-0694 |
法律上は、説明会を開催すれば問題なく、近隣住民の同意は必要ありません。そのため、近隣住民の要望があった場合も、対応する義務はありません。
ただし、民泊経営していく上で、近隣住民の理解は必要です。近隣住民の要望には誠意ある対応を心がけましょう。
近隣住民の説明会が終わり次第、生活衛生課に完了手続きの書類を提出しましょう。
STEP5. 消防署への届出提出および認定申請
所轄の消防署への事前相談後、消防法に合致するリフォームの工事内容を事前申請する必要があります。
法律やリフォーム知識も必要であり、リフォーム後に法律に合致しない問題が発生してしまうと取り返しがつかないため、大田区の特区民泊の消防法のリフォームに詳しい専門家に依頼することをおすすめします。適切な方法で
提出する書類は下記の3つであり、工事10日前までに提出する必要があります。申請方法は「電子」「窓口」「郵送」の3つがあります。
申請後、おおよそ1週間程度で結果通知が届きます。
STEP6. 要件に合致するリフォーム工事
消防署への提出が完了でき次第、リフォーム工事を開始します。
目安として、特区民泊で必要な工事は以下のような金額となります。
STEP7. 消防署の施設検査および保健所の立入検査
リフォーム工事が完了後、消防署の施設検査が行われます。問題なければ、特区民泊を行う上で最難関の『消防法令適合通知書』が発行されます。
その後、最終チェックとなる保健所の立入検査を行います。
STEP8. 認定書の受領
立入検査後、2週間程度で結果通知が届きます。
問題がある場合は立入検査時に指摘されますので、検査時に問題がなければ基本的には結果通知は認定書の受領となります。
STEP9. 事業開始
ここまでの手続きを経て、ようやく事業が開始できます。
特区民泊を行う際の注意点
特区民泊では、安全と規約を守ることが必須です。以下の点を確認し、トラブルなく運営を始めましょう。
注意①賃貸物件は「賃貸借契約書」と「マンション管理規約」
賃貸物件で民泊を行う場合は、「賃貸借契約書」と「マンション管理規約」を必ず確認し、オーナーの許可を得る必要があります。
多くの物件で民泊やサブリースは禁止されているため、事前確認は必須です。
注意②カーテン・クロスは防炎
防炎仕様のカーテンやクロスを用意しましょう。
消防法の基準を満たし、安全性を高めるために、防炎製品を選ぶことが重要です。
注意③煙感知器は防水
水がかかる可能性がある場所には、防水仕様の煙感知器を設置しましょう。これにより誤作動を防ぎ、確実な火災対策が可能です。
注意④事業系ゴミ
まず、ゴミの種類は「家庭系ゴミ」と「事業系ゴミ」に分類されます。そして、民泊から出たゴミは「事業系ゴミ」に分類されます。
事業系ゴミは『一般廃棄物収集運搬許可業者一覧』に収集を依頼する必要があり、その業者との契約し、環境局に申請する必要があります。
なお、大田区では一般廃棄物収集運搬許可業者一覧が公表されているため、相見積もりを取った上で業者選定を行いましょう。
▼ 関連資料
一般廃棄物収集運搬許可業者一覧
特区民泊のリフォームで活用できる補助金
まず、東京都がおこなう「東京都既存住宅省エネ改修促進事業」や、大田区がおこなう「住宅リフォーム助成事業」は、要件に居住用が含まれているため活用できません。
その代わりに、特区民泊の場合は事業として行うため、事業用の補助金を活用できます。
- 事業再構築補助金
- 小規模事業者持続化補助金
「事業再構築補助金」の成長枠は、インバウンド向けに提供される補助金であり、建物や機械設備、システム構築費など、民泊運営に必要な経費の一部が補助される基本的な制度です。また、「事業再構築補助金」の物価高騰・回復再生応援枠は、国内観光客を対象にした民泊開設を目指す方に向いています。
「小規模事業者持続化補助金」は、支給額は比較的小規模ですが、採択されやすい点が特長です。小規模な民泊の運営を計画している人に適した補助金といえます。
大田区の民泊リフォームなら『たてのリフォーム』へ
たてのリフォームは大田区密着のリフォーム会社で、特区民泊のリフォーム実績も豊富にございます。
申請の規約上、申請代行はできかねますが、申請に合致するリフォームの支援なら可能です。
無料現地調査・見積もりを行っておりますので、お気軽にご相談くださいませ。
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